宮城県大崎市・鳴子温泉の『農民の家』から、以下の発表がありました。一定数のファンがいただけに残念です。平成３０年２月２８日関係者　各位 破産申立のお知らせ 〒９８０－０８１１　　　　　　仙台市青葉区一番町１－６－２２－１２０２　　　弁護士法人青葉法律事務所　　…… more 宮城県農民の家農業協同組合代理人　　　　　　　　　　　　　　弁　護　士　　花　　島　　伸　　行Tel　022-223-5590　／　fax　022-227-4628 　拝啓　時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。 　当職は宮城県農民の家農業協同組合（宮城県大崎市鳴子温泉字河原湯５番地の６，代表理事組合長　菅原章夫）より委任を受けた代理人弁護士として，本日仙台地方裁判所古川支部に破産申立を行いました。以下，このような事態に至りました事情について，現時点で可能な限りお知らせいたします。 １　宮城県農民の家農業協同組合は，昭和２４年５月２４日に設立されて以来，６９年にわたり，全国唯一の温泉保養施設の専門農協として「農民の家」事業を実施して参りました。 ２　収益の減少と事業損失の拡大しかしながら，鳴子温泉を取り巻く経済環境自体が厳しさを増す中，平成２１年度には１１．１万人あった「農民の家」の年間利用者数が，その後，施設の老朽化等による評判の低下への手当てができずに漸減し，平成２８年度には６．３万人にまで落ち込んでしまいました。また，比較的低廉な料金にてサービスを提供してきた当施設にとって，近隣の温泉宿泊施設との価格競争という課題が立ちはだかり，他方で施設の老朽化に対するメンテナンスコストも捻出できない中で，利用者確保対策として平成26年度以降いっそうの単価抑制策を実施したことから，結果的に平成２８年度の事業総利益（利用収益及び購買収益から直接費を控除したもの）は平成２１年度（約３．９億円）のおよそ半分（約２．０億円）にまで減少してしまいました。事業総利益から管理費を控除した事業利益／損失でみれば，過去１０年以上，当組合の経営状況は恒常的に事業損失を計上し続けており（赤字経営），当組合の近年の最終損益の推移（事業年度：6月1日～5月31日）は次のとおりです。　　　　　　　　　　　　　事業損失　　　　当期未処理損失　　　　　平成26年度末： 70,889,654円　　41,353,877円　　　　　平成27年度末： 64,977,427円　　46,282,981円　　　　　平成28年度末： 80,545,673円　　86,253,964円 ３　脱退者への持分払戻による資金繰りの悪化　収益の落ち込みにより，平成２４年度以降，欠損金処理のために内部留保（利益準備金等）の取り崩しが急速に進み（平成２８年度末にはゼロ），それに加えて，組合員の高齢化等により年間４００名を超える脱退者に対する持分払戻金として毎年３０００万～５０００万円の資金が必要な状況が続いたため，当組合の資金繰りはますます困難を極めるようになり，払戻に対応できない部分を毎年未払金として計上しながら今日に至ってしまいました。　４　経営改善の努力と未履行債務の増加　経営状況を打開するために，利用客の誘致（ゴルフ大会や各種園芸イベントの開催当）に努めるとともに，新たな組合員（出資者）募集や経費節減（人員，役員報酬，外注費等の削減），役員による組合への貸付（仮受金）等による対応を試みたものの，抜本的な事業の縮小・再編に向けた収支改善計画を実現させることができず，キャッシュフローを好転させるには至りませんでした。その結果，取引先様への買掛金や電気代・水道代等の支払についても恒常的に遅延してご迷惑をおかけする状況が続き，平成２８年度以降は固定資産税その他の公租公課の支払義務の履行まで遅延するようになり，全体として未払金額を圧縮するに至らず，未履行債務額が過去数年間のうちに急速に増大してしまいました。 ５　支払不能と債務超過の顕在化近年，恒常的に損失を計上し，未払金を増加させることで，実質的には持分払戻について潜在的に支払不能に陥っていたにもかかわらず，建物の簿価（約23億円）や固定資産税評価額（土地：約1.8億円，建物：約1.6億円）が現状（不動産業者による土地の査定評価額は約7300万円，建物は老朽化により稼働可能な部屋が約62％にとどまり査定上は解体費用として約2億円強のマイナス，売却仲介想定価格は約３０００万～５０００万円）とは不相応に高額であったため，潜在的な債務超過が顕在化するのが遅れる一因となりました。そして，平成３０年２月に至り，公租公課や公共料金の未払が限界に達し，官公署による差押や電気・水道等の供給停止の可能性が高まる中，労務費の支払いも困難な状況が確実となり，利用者の皆様への十分なサービスを提供できないだけでなく，これ以上取引先様に対するご迷惑をかけられないと判断するに至りました。 ６　負債総額と破産手続の見通し負債総額は，現時点で明らかなだけで約１億４１００万円（①公租公課：約４３００万円，②労働債権：約２０００万円，③売掛金債権：約３１００万円，④脱退組合員に対する持分払戻請求債権：約２０００万円，⑤リース債権：約２７００万円）に達しており，それに対して組合の財産は「農民の家」の施設（土地・建物の処分見込み価格は約４０００万円と想定）のみであるため，明らかに１億円以上の債務超過の状態です。以上の事情で，当組合理事会は，これ以上の経営を存続することが不可能であると判断するに至り，平成３０年２月２８日付けで従業員を全員解雇の上，「農民の家」の営業を停止することを２月２３日に決議し，本日，当職が当組合の代理人弁護士として仙台地方裁判所古川支部に自己破産の申立を行いました。なお，上記のような財務状況での破産申立であるため，組合財産が換価できたとしても，法律上公租公課の支払が優先されるため，労働債権や売掛金債権，持分払戻請求債権に対する配当（弁済）は極めて困難ないし不可能な見通しであることをあらかじめ申し上げざるを得ません。本当に申し訳ございません。また，現組合員の皆様の当組合に対する出資持分に対して残余財産の分配が行われる可能性がまったくないことも，併せてお伝えし，御詫び申し上げる次第でございます。当組合の廃業及び倒産によって，債権者の皆様には多大なるご迷惑をおかけ致しますことを当組合役員一同に代わり心よりおわび致しますとともに，これまでご支援・ご利用をいただいた組合員及び利用者の皆様に厚く御礼を申し上げます。 ７　お願い　　本件に関する破産手続開始決定が発せられますと，以後は，裁判所が選任した破産管財人が当組合の施設等の財産を管理占有するとともに，売却の労をおとりになる予定です（「農民の家」は2月28日をもって閉館）。今後の破産管財事件については，破産管財人へ，この書面のお知らせについては申立代理人事務所まで，それぞれお問い合わせくださるようお願い致します（当組合の理事者及び元従業員に対する直接のお問い合わせはお控えくださるようお願い致します。）。 敬具 ※農民の家ホームページより引用 close

温泉旅館の倒産(8)