古いとボロいと混沌がせめぎ合っている空間お母さんはいつもここに陣取っていた。非常に寡黙僕を見つけると無言で立ち上がり帳場へ入っていく。「お客さん来てるよ」「知ってるよ」と会話が聞こえる　外出時に「部屋の鍵は持ってても良いですか？」と声をかけたら普段の鍵置き場（壁にフックが刺さって…… more いる）を指さして「ここに置いてっても良い」と主に単語で話してくれた建物は、ボロいを通り越してヤバイ域に足を踏み入れかけている。風呂の真上が食事処になっているが、風呂に入っていて食事処を誰かが歩くと、その振動というか揺れが「ちょっと大丈夫か？」レベルで伝わってくる。扉の開け締めも音が筒抜けというより建物全体に響く感じなので怖いと思うときもあった。部屋は玄関そばの階段を上がってすぐ「想出」4畳半＋6畳＋広縁的な空間 一人泊には広すぎる空間だが、メインの居室が4畳半なので広々しているという感覚もなかった畳は綺麗。掃除は行き届いている。洗面台は新しい。窓は大きいのだけど、目隠し用なのか入室時からカーテンは締め切ってある。特に目線が気になる環境でもなかったが、そのままにして過ごした広縁にボロボロの座椅子を見つける。こんな使わないもの捨ててしまえばよいのに…と思ってからハッとして自分の座椅子を確認したら同じものだった。あくまでボロさと汚さは別だが、建物同様備品も老朽化が進んでいる一通り写真を撮り終えて、このボロい座椅子に座った瞬間、凄く気が滅入った。自宅まで３時間、少し頑張れば我が家の快適な空間が待っている、と頭で良くない考えがヒラヒラと舞う。旅館内で見かけたのはお母さんと息子さんの二人だけ。息子さんだけで全てをこなしていると思われる。この息子さん、恐らく真面目で且つ不器用である。世間話をする機会はなかったし、愛想を振りまくタイプではないが、雰囲気が伝わる。普段着をやめて髪をさっぱりして作務衣を着れば宿主っぽくなるのにな、と思うが彼のスタイルなのだろう。館内は中庭もあり、敷地面積は広いこういう手入れの行き届いていない、やや荒れた空間が好きだ昔の住宅にはこういう無駄なスペースがあったが、今の建売ではまず作れない祖父の家を思い出す。その家も今は更地だ水回りは綺麗にリフォーム済み close

いわき湯本温泉　伊勢屋旅館1＠部屋　館内